「嘘つき」
彼女はこちらを見るわけでもなく、ポソリと聞こえる程度に呟く。
その声はややかすれていた。
白く、見る人誰もが絶賛するであろう、つやつやの肌を持った彼女。
そんな彼女に対して、1度ならず、2度も嘘をついてしまったのだ。
「昨日は私、って言っていたよね」
相変わらず目を合わせてくれない彼女に対し、
一言謝罪の言葉を述べる。
これだけ美しい彼女がそばにいるにも関わらず、
どうしても、どうしても、誘惑に勝てなかった。
そう、2度も。
彼女は優しいのだが、どうしても彼女だけでは刺激が足りず、満たされない。
1度目は見た目も派手で、ボリューミーなあの子。
2度目はシンプルに着飾ってはいるが、ところどころ肉感的なあの子。
昨日のことを思い出すとそれだけで幸せになれる。
そんな想像をしていたら表情に出ていたようで、彼女は泣きだしてしまった。
一昨日も、昨日も泣いていたせいか彼女のお肌の調子も悪いように見える。
今日を逃してしまったら死にそうになるかもしれない。
今度こそ、約束を守らなければ……。
そうして私は彼女に近づき、優しく手のひらに乗せ、
鍋にそのまま投入した。
~豆腐~